黒檀はカキノキ属 |
カキノキ属は全世界の熱帯から暖帯にかけて400種あるいは500種ともいわれる大きなグループで、英名はPersinm.on.date
plum,独名は Dattelpflaume,中国名は柿・柿樹である。花部の構成が4数性のものが多いが、3数性のものを別属のMahaとして分けることがあるが、必ずしも判然と区分けできないものがある。ここでは広義のDios-pyrosとしておく。その通性は次のようである。
常緑または落葉の高木または低木で、葉は互生する単葉、単一・全緑で裂片化することなく、葉柄があり托葉はない。雌雄異株または雑居性で花は新枝の葉腋に単生、雄花はまた集散花序を作る。がくは3〜7裂し有毛、雌花では花後やや大きくなっ
て宿存する。花冠は壷状,鐘状などで上端が3〜7裂し裂片は片巻き状に重なる。雄花の雄ずいはふつう 8〜16個、花冠筒の基部につき花糸は葯より短かい。葯は2室で長い線形を呈し縦裂する。雌花には雌ずい1個のほか退化雄ずいがあり子房は上位で
3〜12室、花柱は1〜4個で多くは下部で合生しときにこの部分を欠く。子房の室が花柱の倍数で各室に胚珠1個を含むかまたは子房の室が花柱と同数で各室に胚珠2個を含む。果実は肉質または液質の液果で球形〜卵形、種子は長楕円形などでふつう扇平である。
また黒檀の学名はDiospyros ebenum koenigでインド・スリランカ原産である。別名にインドコクタン・セイロンコクタン、英名にBombay
ebo ny,Ceylon ebony,true ebony,genuine ebony,、中国名に鳥木・烏文木、インド現地名にTendu,Tuki,
Ebansなどがある。 |
材の特徴 |
材は重硬またはきわめて重硬なものが多く、心材は黒色であるがその形成が不規則なもの、または色の濃淡が縞模様となるものもある。黒檀はEbonyの名で高級装飾材として賞用される。果実は美味で食用となるものがあり、ことに東アジアでは果樹として広く植栽される。果実が有毒なものもあり、現地でしばしば魚毒に用いられている。
わが国の材の取引名は本黒檀である。常緑の高木で葉は楕円形など長さ5〜11cm、果実は楕円形で長さ1.3〜2cm、黒色に熟する。心材は黒色であるがときに淡色の縞が入るものがある。
材の顕微鏡的構造は産地・年齢・生育状況などによって変化があるが散孔材で生長輪は認められない。
道管は単独または放射方向に2〜3個、ときに6個までが接続し、分布数は4〜40/mm2,単独道管は楕円形で、径0,03〜0.2mm、単せん孔でせん孔板は水平に近く、内容に黒色の物質がつまっているものが多い。
基礎組織の真正木繊機は径0.016〜0.025 mm、壁厚0.003〜0.007 mnlである。軸方向柔組織では短接線、柔組織が顕著で放射方向に1細胞層・ときに2層、周囲柔組織は不明瞭で0〜1層、中に結晶・黒色物質を含む。柔細砲の径は0.015〜0.035mm、壁厚は0.001〜0.002mmである。放射線機は1細胞幅・または部分的に2細胞幅、3〜25細胞高。その構成は異性で単列部では直立または方形細胞が軸方向両端数層、ときに中間にも入り、ほかは平伏細胞層。2列部はおおよそ平伏細胞層からなっている。細胞の中に結晶・黒色物質を含むものが多い。接線断面での放射線繊の階段状配列は見られない。材の気乾比蚤に0.92〜1.26の範囲の記載があり、1.16のもので縦圧縮強さ790
kg/cm2を示す。 |
ホンコクタン
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ここでは標準的な和名でホンコクタンとされているものについて記す。
学名はDiospyros mollis griffith で、インド・ビルマ・タイ・インドシナ・支郡・海南島に分布する。別名にビルマコクタン・ナンボウクロガキ・中国名に紅枝柿、現地名はビルマでAukchinsa、タイでMakluaといい、わが国の材の取引名では青黒檀とされる。常緑の高木で大きいものは高さ24mまでになる。葉は卵形、卵状皮針形などで長さ5〜12.5cm、果実は球形で径は2〜3cmである。心材はふつう青緑色を含んだ黒色でその組織はコクタンと同様である。ただし接線断面での放射組織の配列は少なくとも部分的に階段状を示す。材の気乾比重に0.70〜1.25の広い範囲の記載があるが、一般に1.00以上を示すと思われる。1.25のもので縦圧縮強さ996kg/cm2、曲げ強1,936kg/cm2、曲げヤング係数18.8×10kg/cm2でその値はすこぶる高い。
材の化学的組成の測定例をあげる。
セルロース35.4%、αセルロース24.3%、ベントザン12.7%、ガラクタン1.1%、リグニン24.2%、冷水抽出物15.0%、温水抽出物18.2%、アルコール抽
出物19.4%、エーテル抽出物15.5%、1%NaOH抽出物48.306、灰分0.3%で、各種抽出物がきわめて多い。果汁は日光に当てて放置されると黒くなり現地で染料に用いられる。 |
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